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物流とDX 〜変化と行動〜(前編)
株式会社リンクス 代表取締役 アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験、在庫が滞留することの怖さを知る。その後の物流会社にて多くの荷主の物流の導入から課題解決を進める。IT企業での実務経験も経て、ファッション業界を知り、物流会社の経験を活かした現場視点での課題解決。現在は「ファッション×IT×物流」の分野で物流コンサルとして活動中。 2019年、物流倉庫プランナーズにてコラム「攻めの物流 守りの物流」連載。 |
物流におけるDXとは?
最近、物流でもロボティクスやAI、IOTなどテクノロジーの話をよく耳にする機会が増えたのではと思います。ただ、実際のところ自社の物流環境ではどうですか?何か変化はありましたか?相変わらず人に依存した現場で、スタッフが走り回っており、変わったと言えば、「働き方改革」で残業が減ったくらいではないでしょうか?
そのため、今回は「物流におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)」とは何か?を前半で。伝えさせて頂き、後半では、「それでも物流は変わらない!」現場について、技術の進化に逆行する物流現場の実情と対策について書かせていただきます。
物流とDX
物流におけるDXとは、どのような事を言うのでしょうか?まずは、DXの定義について整理すると、DXはデジタイゼーション、デジタライゼーションの進化した姿です。
- デジタイゼーション:これまでのアナログ情報をデジタル化して局所的に改善する活動
- デジタライゼーション:そのデジタル化を局所的な領域から、プロセス全域に広げて新たな価値を創造する活動
- デジタルトランスフォーメーション:その結果としてビジネスモデルや企業文化・風土を変革し社会的な影響を及ぼす活動
これを物流に置き換えると、倉庫の中だけに止まらず、サプライチェーン全体をデジタルにとる見える化を行い、製造から販売までを繋げることで、需要予測からの逆流にて製造までをコントロールする領域までが含まれます。
そのため、ロボットによる省人化はそのプロセスにおける一部であり、ロボットを導入したからDXと考えるのは間違いです。製造から販売までがデジタルで、「見える」「つながる」ことで、消費者が欲しいモノが、欲しい時に、欲しい場所で、届けられる環境を構築する、まさにジャストインタイムの考え方ではと思います。
ZARAと物流
物流の領域をサプライチェーンにまで広げて、ビジネスモデルにおけるプロセスを変革した代表的な企業が、アパレルでは「ZARA」です。以前、コラムでもコメントさせてもらいましたが、ZARAは物流費を安く抑えることに注力するのではなく、製造から販売までのスピードにとことんこだわりました。多くの企業がセールによる値下げや、大量廃棄をする中で、売り切るビジネスモデルは、製造から販売までのプロセスを変革し、プロダクトそのものを変革させてモデルではないかと思います。
ZARAは早いタイミングで、RFIDなどの電子タグを導入し、POSの販売実績データだけでなく、フィッテイングに持ち込まれた情報などから、デザインをおこし、予め手配していた生地を使ってQR(クイックレスポンス)で商品を生産し、遠隔地でも38時間以内、日本などの世界各地へは、48時間以内にお店に届ける。
アパレル業界では、すでにベンチマークになる企業も存在するのに、昔ながらの発注製造方式を続けているのは、できないからやらないのか?そもそも、やろうと思っていないのか疑問に感じます。以前「ディスラプション(破壊的変革)」について書かれた本も多く出版されているが、なかなか抜け出せていないのが実情ではと思います。
物流におけるデジテル化
物流にデジタル化が求められる時代背景としては、労働人材の不足と、高齢化があげられる。日本だけを考えると、人口減少が続き消費そのものも減少するので、その問題を楽観視する考え方もあるが、インターネットでの購入機会は今後増えることを考えると、商品が届けるインフラが機能しなくなると日本経済をさらに悪化し、グローバル化が進む中で、日本の復活がさらに遠のくことになるのではと思います。
その解決策のひとつが、ロボットによる省人化や、これまで部署毎にバラバラだったアナログ情報をデジタル化して繋ぎ、AIなどによって分析し最適化することです。
これまでの人口増加で、市場が成長していた時代に通用したことが、人口減少などによって通用しなくなっている、そもそも物流現場では人の雇用すら難しくなっている。働き方改革も、残業の廃止、時短などがクローズアップされるが、効率や生産性が改善するような仕組みを考えないと、人員不足はさらに悪化し、企業そのものの体力を奪う結果になる。
そのため、物流におけるデジタル化やロボティクスの導入は、これからの時代を生き残る為には必須事項です。
変化と行動
私がセミナーで講演をする時は、冒頭でいつもこのような質問しています。「この1年で新しいことに挑戦しましたか?」そして、もうひとつ。「自分の会社はまだ大丈夫と思っていませんか?」みなさんの会社はどうでしょうか?
自分自身は、新卒で入社した会社が上場し、そのあと倒産する経験があります。社長が本を出版し、ビジネスモデルが世間から注目を浴びたが、その数年後、倒産して200名ほどいたスタッフは一瞬にして職を失いました。家族がいるものもいたし、結婚したばかりのものもいて、その多くの人生が「倒産」によってSTOPしました。その時のことは今でも覚えています。
その経験から、人より臆病なのかもしれない、悲観的なのかもしれない。ただ、その経験から時代にあわせて「変化」することと「行動」することの大切さを学びました。倒産する前にできることはあったのに、まだ大丈夫だろうと、変化より現状維持を選んだ、そして、行動することより、待つ事を選んだ、その時の後悔が今の自分を原動力となっています。
DXの話とは少しかけ離れましたが、物流におけるデジタル化とは、まさに「変化」「行動」によって切り開くことではと思います。
次回、後編では変化を妨げるさまざまな問題と解決策について紹介いたします。この不透明で大変な時代を、次の世代につなげるために「変化」と「行動」となるきっかけになればと願っております。
後編こちら: 物流とDX 〜変化と行動〜(後編)