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EC×物流 エバンジェリスト対談セミナー『アフターコロナを生き抜くためのECと物流』レポート<前編>

EC×物流 エバンジェリスト対談セミナー『アフターコロナを生き抜くためのECと物流』レポート<前編>

2020年8月5日にメガネスーパーなどでオムニチャネル化を推進されているECエバンジェリスト 川添隆氏と株式会社リンクス 代表取締役で物流コンサルタントの小橋重信氏による対談形式のセミナーを開催。「アフターコロナを生き抜くためのECと物流」というテーマでお話いただきましたので、一部抜粋してレポート公開いたします。

セミナースライド

コロナ禍で企業の基礎筋力みたいなところに差が出ている

小橋:コロナによる経済に対する犠牲者が多く、さらに今後を考えると油断出来ない状態ですが、川添さん自身はコロナによる影響やどのような変化がありましたか?

川添:ビジネスでいうとコロナ禍で企業の基礎筋力みたいなところに差が出ていると考えています。例えば、社内でのコミュニケーション、アイデアだし、意思決定のスピードの早さが企業によって違います。実店舗がメインであっても、非対面でもチャレンジを継続していく企業と、決断が遅れている企業で歴然とした差が出ています。これは今後アフターコロナになった時、腹筋バキバキの人か、ヘロヘロの人か、そのくらいの違いが出るはずです。僕がアドバイザーをやっている企業にも、コロナ禍でも成功している企業は意思決定の早さや、チャレンジをしている企業であると伝えるよう心懸けています。

小橋:僕自身もコロナによって、より「伝える」ことの大切さを感じていまする。川添さんがECエバンジェリストとして情報発信をし続けているのを見て、強い想いを感じていて、私も物流でそのような情報発信ができればと思いましたをしたいと思っている。川添さんがはそのような「伝える」ということをはじめたきっかけはなんですか?

川添:これは企業経営に関わる領域の話ですけど、メガネスーパーの再生というところは泥臭く、明確にビジョンを示して、はじめは「赤字の企業を単月で黒字にする」ということや、今であれば「我々の大義はアイケアを提供することである」ということを明確に決めていますが、社内であってもこれは言い続けないと伝わらないということを身にしみて感じている。

僕自身はこれまで企業再生を2社関わってきて言えることは、再生するには“人のチカラ”が大事ということです。苦難の中で、全員が踏ん張る必要があるときに支えになるという意味合いもあります。ビジネスにおいても、組織が変わることで必ず結果につながっていくことはメッセージとして伝えていきたい。
「テクノロジーで何とかなるのではないか」とか、そういう方にすがりがちな人が多いのですが、店頭オペレーションも経験知として理解しながらデジタル側をやっている人間として、「そこは違いますよ」と伝えていきたいという意志があります。

小橋:いつも熱い想いが伝わってきていたので、今回一緒にできて光栄です。今回、過去から遡って小売・EC・物流の変化をまとめてみたのですが、インターネットの影響が急激に拡大してきたのはたかだか10数年くらい。小売業については近年、お店だけでビジネスを考えられなくなってきています。それが、2020年以降コロナによってどのように加速するのか。悠長なことを言っていられる状況ではないと考えています。

セミナースライド 出典:小橋重信氏作成セミナースライドより

小橋:コロナによる小売業、ネット通販、物流の変化というところですが、アメリカのウォルマート社がコロナ禍でも過去20年で最大の増収増益売上の伸び率を叩き出しています。BOPIS (Buy Online Pickup In Store)といって、ネットで商品を購入・支払いをし、店舗の横に車を停めて商品を受け取るという形を2018年から始めています。つまりコロナ禍だから始めたのではなく、以前からリアルの店舗をもっている強みを活かし、対策をしていた企業が伸びてきている。そういう最後のラストワンマイルやお客さんとのタッチポイントを準備しているところがコロナの中でも業績を上げています。今、このコロナの状況というのは、これまでのやり方を変えず、待っていればいつか良くなる状況ではない感じています。今後、店舗とECの役割、小売業・流通が大きく変わっていくのではないかと思っていますが、このあたり川添さんはどのように捉えられていますか?

コロナ禍で打撃を食らったのは物流がパンクしやすいという事

川添:店舗に置くのか、倉庫に一括して置くのかという在庫ロケーションの問題と、B2Cの配送機能を店・倉庫それぞれに持たせるのかというのは、コロナ前からよく話されていますよね。もともと店舗は、在庫を補完する倉庫と顧客体験という場所という2つの機能がああり、そこに物流という議論の軸が加わったと捉えています。
悩ましいのは、D2Cブランドの店舗では「商品はネットで買ってください」というのがビジネスモデルや店舗のオペレーションに組み込まれていますが、一般的な既存のアパレルや小売業が「ネット見て買ってください」というやり方にはいくつかの不具合が生じる可能性があるということです。テナント出店の場合のデベロッパーとの契約問題、評価の問題、そして販売機会ロスを生んでしまうことです。特に、持ち帰りたいニーズに対して現物がそこにあるかというのは、僕が知る限りではまだテクノロジーで解消できない問題かなと。今のところ、すぐ欲しいという人に対しては、その店か周辺に在庫を置くしかないですよね。今テクノロジーでできることは在庫データを連携して、お店にある在庫をECで売れるようにする、他店でも注文できるようにするなどの在庫を物理的なロケーションから解放される手法や、モバイルオーダーのように事前に注文しておいてお店に取りに行く、お店から発送・デリバリーするなど、在庫を見える化することで時間の制約から解放する手法あたりだと捉えています。これらの手法の実現性の観点では、商品単価・利益率、SKU数などの効率を考える必要があるため、低単価のアパレルとかだと選択できる手法は画技られるでしょう。
「物が今そこにあるかどうか」自体がサービスに関わっていて、それを最適化するということはモノの動きを捉える物流単体の話ではなくて、サービス設計、商品の供給体制、ブランド戦略のような上流を変える必要があるのがポイントかなと思っています。
コロナで小売業は特にキツイ状況で、回復するのは2023年以降とか言われています。その間店舗メインの企業はキャッシュフローがシビアになるので、特に物流のハードに対する投資の優先度は低くなると思うんですね。短期的な利益増に結びつかなければ投資ができない。だけど、コロナ禍で一番負荷が高かったのは物流(庫内作業、配送を含め)とカスタマーサポートということは明らかです。大きな投資ができない中で、どうやって物流を変えていくのかとなると、モノが入る前の上流を変えることの方が合理的だと考えています。例えば型数や型数や色数を減らす、メーカーからの店舗直送を増やす、店舗からの倉庫集約を減らす、イレギュラーの依頼を減らすなど、物流の負荷を減らす手法はたくさんあるはずです。上流を変えるには組織を動かす別の筋力が必要ですが、ある程度回復するまではこういった打ち手の方が現実的だと思っています。

小橋:これまでは需要を刺激して、そこにお客さんをどう惹きつけるのかという話しだったと思うのですが、コロナ禍は需要を創造するマーケティングだけではなくて、その需要に対してどう遂行するのかが「物流」だと思っています。
ECで商品の購入を検討するときに同じ商品でも早く届く方で選ばれることも多く、スマホが普及して、瞬間的に欲しいというニーズに物流がどう応えるか、マーケティングに加えて物流の設計も重要になっていると思います。

川添:複数の小売事業者の話を聞くと、従業員の休業を増やしてコストセーブをしている企業がほとんどです。こういったリソースが限られた状況では、トレードオフを考慮して意思決定をしなきゃいけないですよね。「あちら立てれば、こちらが立たぬ」を繰り返して意思決定が遅れること自体が最大のリスクです。複数の選択肢のリスクを明示して1つ1つの決断をして、スピーディに実行に移していくことが大事。経営者じゃなくてもECや物流の責任者が業務の引き算と足し算をして、「これをやりましょう!」という意思を示さなければいけないでしょう。

小橋:物流って、その企業の裏側が見える感じで、企業が表向きは「こんなに良い物作りをしています」と言っていても、意外と物流を軽視していたりすることがたくさんあります。全体を俯瞰して見られる人がいるかいないか、今回のコロナで明暗が分かれた気がします。

川添:モノの流れにおけるシワ寄せを物流で帳尻合わせしようとしてきましたが、立ち行かなくなっているケースが散見されます。私がECの担当者・責任者をやっていた時は、定期的に自社の倉庫やECの出荷現場を見に行っていたのですが、実際にこの目で見ることでリアルな状況からの発見が多いです。例えば、「こんなに在庫余っているのか」とか「なんでこのオペレーションになっているのか」など、臨場感をもった危機感がわいてきます。特にアパレルにいた時には、在庫の量を見ると青ざめる感覚がありますし、「売れない」とか言っている場合ではないと痛感しました。ECのフロントやマーケティングをやっている人は、定期的に物流を見に行った方がいいと断言できます。それだけで、担当としての危機感、企業としての危機感が得られます。

小橋:物流も物流側で悪いところがあると思います。物流の問題についても受け身な時があります。フロントでどういうことをやりたいとか、オムニチャネルやりたいって話になった時、在庫管理や商品の流れに影響するため、物流側からも口出していくべきだと思います。これまでは商いに集中して、物流は別部門で庫内だけの効率化とか配送効率をどうするかとやっていたのですが、そういう商物分離からこれからは商物融合し、一緒に考えていく必要があると思います。

前編はここまで。後編はこちらからお読みいただけます。

登壇者プロフィール

ECエバンジェリスト
川添 隆 氏プロフィール

佐賀県唐津市出身。アパレル関連企業を2社経験後、前職のクレッジでEC事業の責任者としてEC売上を2年で約2倍、LINE@の成功を収める。2013年7月よりメガネスーパーに入社。EC事業、オムニチャネル推進、デジタルに関わる全てを統括し、7年弱でEC関与売上は7倍、自社ECは月間受注13倍に拡大。O2O・オムニチャネル推進を図る。2018年よりビジョナリーホールディングス 執行役員。また、2017年にエバンを設立し、複数企業のアドバイザーに従事。著書に[「実店舗+EC」戦略、成功の法則~ECエバンジェリストが7人のプロに聞く~]がある。

株式会社リンクス 代表取締役
小橋 重信 氏プロフィール

アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験、在庫が滞留することの怖さを知る。その後の物流会社にて多くの荷主の物流の導入から課題解決を進める。IT企業での実務経験も経て、ファッション業界を知り、物流会社の経験を活かした現場視点での課題解決。現在は「ファッション×IT×物流」の分野で物流コンサルとして活動中。 2019年、物流倉庫プランナーズにてコラム「攻めの物流 守りの物流」連載。

※こちらの記事はセミナーの内容をレポート用に編集したものになります

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