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EC×物流 エバンジェリスト対談セミナー『アフターコロナを生き抜くためのECと物流』レポート<後編>

EC×物流 エバンジェリスト対談セミナー『アフターコロナを生き抜くためのECと物流』レポート<後編>

2020年8月5日にメガネスーパーなどでオムニチャネル化を推進されているECエバンジェリスト 川添隆氏と株式会社リンクス 代表取締役で物流コンサルタントの小橋重信氏による対談形式のセミナーを開催。「アフターコロナを生き抜くためのECと物流」というテーマでお話いただきました。【前編】に引き続き、レポートの後編を公開いたします。ぜひ、お読みください。

セミナースライド

根底にある意識を変えていかないとデジタル化も何もできない

小橋:さきほどアパレルの話が出たので、この話は外せないと思うのですが、セシルマクビーのブランド撤退のニュースというのはショッキングだったのですが、今後ファッション業界というのはどうしていったらいいのかと思うのですがいかがでしょう。

川添:ファッション業界に限らず小売全体の問題ですが、特にファッション業界はオーバーストアと言われてきました。それも起因して、生産したアパレルの過半数は廃棄されていると考えるとモノも溢れているということですよね。ファッションのトレンド発信のサイクルを見直すという話もあると聞いています。

思考停止をしていた企業はコロナ禍でよりキツイ状況になったのは言うまでもありません。私はデジタル推進する側ですが、手段が大事というよりも、常に経営や部門、店単位で思考し実行に移していくことが大事です。特に経営や部門責任者は客観的なマクロな視点と、顧客になりきることを含めた主観的な視点をうまく使い分けが必要でしょう。
データはそのための材料だと捉えています。POSの購買情報、顧客管理システムの顧客の購買情報、ECの情報など、すでにとれているデータはどの企業にも存在します。ですが、取れているデータを見ているようで見ていなかったり、十分にいかせていないケースが多いでしょう。まずは今あるデータを分析して、理解度を高めたり次のアクションに足りないデータを追加で取得する方が合理的だと捉えています。

例えば、私がアドバイザーで支援しているアパレルブランドのEC化率は約10%ほどで、自社ECは前者の売上に対して3%ほどです。ある時、お客様に「どのチャネルで情報を見て、どのチャネルで実際に購入しますか?」というアンケートを取ったのですが、先にオンラインを見て購入する人は40%でした。限られた回答であることが前提ですが、購入比率とデータでは取り切れていない顧客の行動にはギャップがあるのではないか?ということが見えてきます。なんとなく感じている「お客様の行動が変わっている」ということをデータで実感できるはずです。実感ができれば、直接的な売上計測できていなくても、オンラインの活動の優先度はあげられますよね。
EC化率が高い場合は、今後は店舗をなくしていいのですか?という議論が出てきます。しかし、チャネルの特性が異なるので、もともと店舗がメインの企業で店舗がなくなれば、これはECに影響がでてくるはずです。オンラインは能動的に探しに来るお客様が来られるプル型のチャネルです。オフラインは回遊することで「あれいいな」に出会えるプッシュ型の要素も持つチャネルです。それぞれの良さが必ずあり、相乗効果を生めばよいのです。

データに話しを戻すと、データを抽出したり分析したりするのは特定の部署でも良いかもしれませんが、店舗やブランド、プレス、物流などそれぞれの役割としてデータを読み解く必要があります。顧客の変化に対して、自部署はどのように対処するか?そして他部署と連携するか?誰かが決めてくれるのを待っていたら遅いのです。そういった“意識”が変わらなければ、仮にデジタル化したとしてもうまくワークしないはずです。意識が変わらないと、「なんでこんなの使うの?」とか、「業務内容変えるのイヤなんですけど」というWhy?が抜け落ちてしまいます。意識改革という本丸に手を入れない限り、中長期的に戦える組織にすることは難しいと思います。

小橋:お客さんが変わっているのだから、普段からそういう考え方を教育していくことが大事なんだろうなと思いますね。

DXはみんなをハッピーにするためのもの

川添:DXってテクノロジーをやみくもに実装することではないが、意識改革からスタートと言われると、もはや何のことだかわからなくなっています。そこで、「DXはその企業・ブランドの全ての関係者がハッピーになるためのもの。テクノロジーを使って、人間の限界を補完できる」と先日ある方に説明しました。ハッピーになってほしいのは、企業、従業員、お客様、お取引先様です。

例えば、生産関連のお取引先様との関係。余計なものを作って捨てるなら、商い自体が無価値とも捉えられます。その行動を無駄にしないためにはどのようなデータをどのように共有すればいいか考える必要があります。リアルタイムに販売データが共有できれば、生産や納品の優先順位を効率的に付けられるかもしれません。川上にデータが共有されれば、B2Bでの取引だけでなく実際の消化までわかるようになり、次の生産にいかせることは間違いありません。オンデマンドで生地生産ができな時代になれば、反映できるタイミングも早くなります。ビジネスとしても実感としてもハッピーな方向性になるんじゃないかと。もちろん、現在できない理由があるのは理解しますが、こういった流れに向かっていくようなエコシステムを構築しないと、ビジネスの持続可能性が高まらないはずです。

販売における従業員と顧客の間では、OMOというのがキーワードです。これもサザエさんのサブちゃんに例えて話しをするんですが、三河屋さんのサブちゃんはフグ田家と磯野家を熟知していて、かゆいところに手が届くサービスをやってくれますよね。先読みしてモノを届けてくれたり、何なら子供とも遊んでくれたりします(笑)。いい距離感で完全なるパーソナライズされたサービスです。しかし、これは量をカバーするには人間の限界があります。サブちゃんが100軒のお宅をカバーするのは難しいですし、多くて20~30軒ではないでしょうか(記憶の限界は30人くらいとも言われます)。それを拡張していくために、テクノロジーを導入するということです。データで予測してロボットがモノは準備してくれれば、配送とコミュニケーションに集中できます。お届けする時に過去の購入履歴や会話データがあれば、次の提案も想像しやすくなります。これは例ですが、もはや顧客の多様化によって市場環境が多様化している中では、テクノロジーと人間の役割を分けて、うまく使っていくことが顧客満足と利益に効いてくるのではないでしょうか。

小橋:(DXが進まない理由として)デジタルが目的になってしまっているというのが大きのではと感じます。そのため、デジタルを表層的に捉え、抵抗意識が生まれています。でも本来は、人を助けるためのツールのひとつでしかないですよね。そして、今はそれに頼らざるを得ないと思います。

川添:物流も店舗も人がやるからオペレーションをその場ですぐに変えられるじゃないですか。それは人の良さでもあります。だから、新しいサービスをやろうって決まったら、システムはルールを決めて開発しないと対応ができません。逆に言うと、例えばアパレル企業の中でも複数ブランドあって、それぞれ業務フローが違うとなるとシステム化しづらく、イレギュラーが多くなります。物流においてもブランドAと、ブランドB・C・Dとで物流の運用違うとなると、システムに基づいた運用ではなく人で対応する必要が出る可能性があり、結果的にコスト高になる場合もあるでしょう。よくよく考えると当たり前のことですが、「委託した3PLの物流会社はよしなにやってくれるでしょ」と捉えていると、どこかのタイミングで確実に炎上します。ビジネスサイドの人、特に経営のレイヤーの人がそのあたりの道理を理解して、自社のオペレーションの理由を知っておく必要があります。部分最適と全体最適は二項対立になりやすいですが、システムは全体最適の観点が前提です。では今何をやるべきか。最初からオペレーションを決めるのであれば基本的に統一できるように設計すべきですが、既存のオペレーションが存在する企業はそうはいきません。まずは業務負荷を許容して、実績・効果が出たからシステム化していくステップの方が良いかなと思っています。この場合も定期的に全体を俯瞰的に見る機会が必要です。いずれにしろ、変わろうと思ったら今からでも変われるはずです。

以上、セミナーレポートでした!本セミナーの動画を後日、YouTubeチャンネル『物流倉庫プランナーズTV』にて公開予定です。チャンネル登録と通知設定をよろしくお願いします!

登壇者プロフィール

ECエバンジェリスト
川添 隆 氏プロフィール

佐賀県唐津市出身。アパレル関連企業を2社経験後、前職のクレッジでEC事業の責任者としてEC売上を2年で約2倍、LINE@の成功を収める。2013年7月よりメガネスーパーに入社。EC事業、オムニチャネル推進、デジタルに関わる全てを統括し、7年弱でEC関与売上は7倍、自社ECは月間受注13倍に拡大。O2O・オムニチャネル推進を図る。2018年よりビジョナリーホールディングス 執行役員。また、2017年にエバンを設立し、複数企業のアドバイザーに従事。著書に[「実店舗+EC」戦略、成功の法則~ECエバンジェリストが7人のプロに聞く~]がある。

株式会社リンクス 代表取締役
小橋 重信 氏プロフィール

アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験、在庫が滞留することの怖さを知る。その後の物流会社にて多くの荷主の物流の導入から課題解決を進める。IT企業での実務経験も経て、ファッション業界を知り、物流会社の経験を活かした現場視点での課題解決。現在は「ファッション×IT×物流」の分野で物流コンサルとして活動中。 2019年、物流倉庫プランナーズにてコラム「攻めの物流 守りの物流」連載。

※こちらの記事はセミナーの内容をレポート用に編集したものになります

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