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ヤマト運輸インタビュー 人手不足・再配達問題【前編】

ヤマト運輸インタビュー 人手不足・再配達問題【前編】

物流業界 ~深刻化する人手不足と再配達問題~

トラック運送や倉庫内を問わず、人手不足が深刻化する物流業界。お客様にとってより便利になるよう取り組まれる中、各社は自動化などでコストダウンを図ります。

ヤマト運輸株式会社(以下「ヤマト運輸」)でも、限られた人手の中でいかに効率よく、サービスの品質を下げずにお客様へ価値を提供できるかという点をフォーカスしています。今回のインタビューでは、第二法人営業部部長である勝氏に物流業界全体の課題としてあげられる「人手不足」や「再配達」の問題について、また課題解決のための自社での取り組みについてお話を伺いました。

勝 洋一郎(かつ よういちろう) 略歴

2003年 ヤマト運輸株式会社入社
2009年 同社グローバル営業部
2011年 米国ヤマト運輸株式会社
2015年 ヤマト運輸株式会社営業戦略部
2016年 パックシティジャパン株式会社 執行役員営業部長
2019年 ヤマト運輸株式会社 第二法人営業部長(現職)

ヤマト運輸が向き合う“幹線の人手不足問題”

― 昨今の人手不足に関する課題について、意見をお聞かせください。

物流業界全体として人手不足というのは深刻化しております。他社でもロボティクスを導入しつつ業務をオートメーション化し、自動化までいかなくともさまざまな業務の効率化に注力されていると認識しています。

それでも人のオペレーションというのは必要で、“最後の効率化”部分の要です。世間ではラストワンマイルでの人手不足が問題視されており、減っていく労働力に対してどのような対策をしていくのか、というのが当社の課題でもあります。

― ヤマト運輸では、どのような職種で人手不足を感じていますか?また、それに対する解決策を教えてください。

当社の場合宅急便の配達員を『セールスドライバー』と呼んでいます。お客さまの近くに拠点を構え、宅急便をはじめとする集配や営業活動などを行っており、こちらの業種に関しては基本的に募集をかければ、応募者が集まるという環境は継続されております。

宅急便の幹線輸送は、各地域の物流企業のご協力をいただくことで成り立っていますが、どちらかというと、幹線輸送の担い手である協力会社の長距離ドライバーの方の不足感が強いのが現状です。長距離運転になるため若い方から敬遠されています。

今後ますます深刻化するであろう幹線輸送の人手不足の対策としては、他社企業との共同運送でスーパーフルトレーラSF25を活用しております。SF25を導入することにより、大型トラックへの積載量が従来の2倍になり、車両台数の削減によりCO2の排出量も低減されます。

スーパーフルトレーラSF25とは

10tトラックの二倍の荷物を運送することが可能な25mのダブル連結トラック。

他社のトレーラを連結できるため、物流業界全体として、企業の壁を越えての輸送効率化に貢献します。 車両台数の削減により、CO2排出量や、物流大手4社で共同運送を行うため運転時間の削減も見込まれています。

人手不足解決のヒントは物流業界全体としての”協力体制”

― 運賃をサービス品質に合わせて変更し、人手不足の解消を行うなど、サービスインフラに関してお考えなどはありますか?

当社ではクロネコメンバーズという会員制度があり、その中でお客様ひとりひとりのご要望にお応えできるような環境づくりを行っております。例えば、マイカレンダーという機能では、あらかじめお客さまの都合に合わせて曜日ごとに受け取り方法を設定できます。

金曜日はお客様と会食があり遅くなるから最寄りのコンビニ受け取りだと都合が良い、日曜日は終日家にいるから家に配達してほしい、などお客様のニーズに合わせてなるべく多くの選択を提供しております。通知に関しても、メールやLINEなどさまざまなご連絡方法からお選びいただけます。

お客様はそれぞれニーズが異なります。私たちは当社サービスを利用いただいた際に便利だなと感じていただけるよう、日々試行錯誤しております。お客様が迅速に、再配達のないようお荷物を受け取れるようなサービスをご用意することも、結果として人手不足の解決策になると考えます。

また、お客様のご要望に対して真摯に向き合うためには、創意工夫が必要です。今後の物流業界の成長のためにも、“協力体制”がキーワードになってくると思います。

― 協力体制というのは、他社とのということでしょうか?

そうですね。SF25に関しても、西濃運輸様、日本通運様、日本郵便様とヤマト運輸が4社共同で取り組んでいます

私自身、以前はヤマト運輸とフランスのネオポスト社の合弁会社であるパックシティジャパン株式会社(PCJ)に出向しておりました。PCJは駅などの公共性の高い場所にオープン型宅配ロッカー「PUDOステーション」を設置し、システムを含め運用している会社です。ヤマト運輸が出資する会社ですが、“オープン”の理念のもと佐川急便様や日本郵便様にもご利用いただいています。ロッカーの配置というのはコストがかかりますし、なかなか一社一社が個別でサービス展開することは難しいと思います。お客様も通販でお買い物をする際、運送会社を選べるわけではないので、各運送会社でロッカーを分けてしまうとお客様にとっても都合が悪くなってしまいます。

オープンな思考で協力体制を構築していくことも、お客様や企業の手間や無駄を省き、結果として人手不足やそれ以外の課題の解決方法につながるのではないかと思います。

― お客様からすると、荷主同士の協働イメージはあっても、運送会社同士というのは意外に思われるかもしれませんね。

特にお客様からはみえない部分での協働なので、そうかもしれませんね。

人手不足に関する解決策を単純にコストで解決するのではなく、お客様・荷主様にとってより価値のあるネットワークを物流業界内で協力してつくることが大事だと思います。

荷主様からしても、お客様に製品を時間通りにお届けでき、サービスも適正なコストに基づいており、SF25であればエコな部分などで企業イメージをアップもできる、と考えると納得していただける理由も多いのではないでしょうか。

共同配送も進んでいかないと、最終的にはお客様の満足度が下がりますし、私たちの労働環境も悪化してしまいますので誰も得をしません。

宅配業界のこれから

3PL業務の効率化にフォーカスされる中、宅配業務は先行きが不安という事業者は多くいらっしゃいます。ヤマト運輸では、3PLやロジスティクス業務を担当しているヤマトロジスティクス株式会社や他のグループ会社とも融合して法人営業にも力を入れているという。グループ会社だけではなく、今後は他社ともさらに協力体制を強化していく事が物流業界の回復につながるきっかけだとお話いただきました。

これまでのヤマト運輸は、宅急便の荷物をいただくというところがメインで、ソリューションもその部分に付随するところが多かった、と勝氏は語ります。お客様のご要望としても、シームレスに注文から出荷までつなげる事でリードタイムを削減し、荷物の受け取りまでをすべてワンストップで求められています。次回インタビュー後編では、そんなリードタイムの増加に影響する再配達問題や、EC物流の課題、ヤマト運輸が提供する価値についてご紹介いたします。

後編の記事はこちらから

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