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ヤマト運輸インタビュー 人手不足・再配達問題【後編】

ヤマト運輸インタビュー 人手不足・再配達問題【後編】

スピードだけではない、再配達問題の解決策

前回の記事では、人手不足を背景とした物流業界の課題や対策についてご紹介させていただきました。今回の記事では、通販やEC事業者の課題、またそれに対してヤマト運輸株式会社(以下「ヤマト運輸」)の提供できる価値や、再配達問題に関してお話いただきました。

前回の記事はこちらから

勝 洋一郎(かつ よういちろう) 略歴

2003年 ヤマト運輸株式会社入社
2009年 同社グローバル営業部
2011年 米国ヤマト運輸株式会社
2015年 ヤマト運輸株式会社営業戦略部
2016年 パックシティジャパン株式会社 執行役員営業部長
2019年 ヤマト運輸株式会社 第二法人営業部長(現職)

EC事業者へ提供する価値とは

― 御社で実践されている通販・EC事業者様への価値提供について教えてください。

今は、ラストワンマイルに関する価値提供にフォーカスしています。なるべくお客様の望む方法で、ご注文後ワンストップでお荷物をお届けすることに注力しております。

通販でご注文後のリードタイムが長くなってしまう原因として、お客様がご不在のときにお荷物が届いてしまう、という理由が挙げられます。通販でのお買い物をストレスフリーに楽しんでいただけるためにも、お客様のご都合に合わせて荷物が届く・受け取れるような環境をつくり、リードタイムを短くすることが大事だと考えています。

― リードタイムを短くするために実施されていることなどありますか?

リードタイムを短くする、ということは単に出荷からお荷物のお届けまでの時間を最短にする、ということではありません。今までのヤマト運輸では、配達の部分でどう強みを活かせるか、どうすれば事業者様へ価値を提供できるか…と考えたところ、“配達が早ければ早ほどいいのではないか”という認識がありました。

しかし、私たちが朝イチでお荷物をお客様へ届けに行ったところで、ご不在でなくとも眠られている場合が多いと思うので、お客様に必ずお荷物を届けられるというわけではありません。早いだけでは、お客さまによってはそれほど意味がなく、お客さまそれぞれのご都合とご要望に合わせることが重要です。

より良いサービスを提供するためにも、お客様ご自身からクロネコメンバーズを通して都合のいい時間帯や受け取り場所を教えていただき、再配達にならないようお荷物をお届けすることこそが、結果として“リードタイムの短縮”につながります。

― 今後の通販やEC物流の課題や動きについてお聞かせください。

最近ですと、量販店のような“実店舗をもっていらっしゃる企業”が通販に力をいれはじめていると感じます。今後は、ECサイトの運営のみを行う通販会社も、お客様との接点を持つために実店舗を持つ企業が増えていくのではないかと思います。

また、一部通販ではアパレル用品を「試着」できるサービスもございます。洋服を自宅まで届けてもらい、気に入らなければそのまま無料で返品、気に入ればそのまま購入するというサービスです。リアル店舗ならではのプラスオンのサービスを通販でも体験できる、そのようなサービスが増えていく中で、当社としても何かお手伝いできれば、というところは常に考えております。

それにともない、当社の宅急便センターも今後は立地や用途などを考え直そうという流れがあります。現状ではあくまでも荷物を出荷し、受け取る拠点として機能していますが、このセンターをプラスオンのサービスを行うにあたって活用することもいずれは可能になるのではないかと考えます。

通販やEC事業者様への価値提供という点でも、ECとお客様との“リアルな接点”を増やすためにヤマト運輸のリソースを活用することによってなにかお手伝いさせていただければと思っております。

午後からの配達をメインで担当する"アンカーキャスト制度"

― 宅配便の増加による集配キャパシティーの問題について、ヤマト運輸ではなにか対策などとられているのでしょうか?

近年セールスドライバーを中心とする社員の働き方改革に注力する中で、宅急便の総量抑制に取り組んできました。一方で、通販を中心に宅配の需要は増え続けているため、この需要増に応えるための策として“アンカーキャスト”を導入いたしました。アンカーキャストは、午後から配達中心の業務を行うドライバーのことです。通販が伸びている影響で、以前よりも夜間配達の需要が高まっています。

本来セールスドライバーは、午前中の配達が中心で、午後に集荷・営業を行うのですが、再配達の増加もあり午後以降の配達量が以前よりも大きく増加しています。集荷中にお電話をいただいてもすぐに再配達に伺うことができず、お届けが夜にずれ込んでしまうことから、結果として労働時間が伸びてしまうという問題がありました。

アンカーキャスト制度が導入されたことにより、セールスドライバーは本来の業務である集荷や営業に集中できるようになり、結果として営業力も上がります。労働環境を良くするためだけではなく、品質のよいサービスを提供するためにもアンカーキャストの役割は大変重要です。

お客様のニーズに合わせて変化し続けるヤマト運輸


宅急便の利用シーンは時代とともに大きく変化してします。単身世帯や共働きの増加など、お客さまのライフスタイルが多様化しています。またそれに合わせて、通販の利用が拡大しています。昔は一人で住んでいるビジネスマンや学生さんの家に、荷物が届くケースはそれほどありませんでしたが、今は、単身でお住いのお客さまのお宅に宅急便が頻繁に届くようになりました。お客さまがお仕事などで外出される時間は早いので、結果として再配達も増えます。

ですが、決して難しい話ではありません。夜配達の需要が増えれば、アンカーキャストの制度を導入する。お客様が家に帰れるかわからない日は、近くのコンビニやロッカーまでお荷物をお届けする。お客様の性質の変化に対して、私たちがどう対応できるかを考えるだけのことなのです。

そうすれば、お客様のニーズに応えながらお荷物が届く間のリードタイムも短縮し、結果として再配達や人手不足の問題解決につながります。

人手不足や再配達、通販の課題についてまず“顧客視点”で考えるヤマト運輸。その背景には、お客様第一の文化が根付いているからだと勝氏は語ります。再配達問題に関しても、お客様がご不在の時にお荷物を届けてしまった方に落ち度があるという意識を持ち、常にお客様のためにサービスや配送方法の試行錯誤を行います。

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