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国土交通省 ロングインタビュー(最終回)

国土交通省 ロングインタビュー(最終回)

国土交通省 総合政策局 物流政策課 物流産業室 流通業務総合効率化事業推進官 神澤 直子氏インタビュー最終回

国土交通省 物流政策課の神澤直子さんロングインタビュー最終回です。今回は、物流業界の働き方改革と、業界の今後の展望などをお伺いしています。
前回までのインタビューはこちら

物流が経済・社会を支えている

― 物流業界における働き方改革として、荷主や物流会社・運送会社が行うべきこと、準備すべきことや考え方を変えなくてはいけない部分はどのようなことがありますか。

荷主と物流会社・運送会社それぞれの立場・視点からお答えしたほうが良いかなと思います。荷主については、先程の話にも関連するのですが、自社の製品を売る上で実は物流が要になっているという認識をしっかり持っていただくことだと思っています。元々、「ロジスティクス」とは軍事用語の兵站(へいたん)のことであり、重要な”物資や整備の支援をする”ことを意味しています。

この軍事を企業運営に当てはめて考えたとき、物流がビジネスの重要な部分になっているにも関わらず、十分な資源投資をしてこなかった荷主は多いのではないかと思います。そうした物流に対する考え方を転換し、物流に過度な負担をかけていないか、適正なコストを負担しているか、十分に確認をお願いしたいと思っています。

一方で物流会社や運送会社は、まず1点目として、荷主に対して付加価値を提供出来る会社に変わっていく必要があると思っています。「荷主に言われたからこうやります」という受け身ではなくて、荷主の利益に繋がる提案を物流視点からどんどん行い、荷主に対してしっかりと付加価値を提供し、またそれに応じた適切な料金を提示していくことが必要です。

2点目は、従業員を大切にしましょうということだと思っています。よくビジネスの教科書などでCS(顧客満足)はES(従業員満足)から始まると言われますが、従業員は会社に大切にされることで初めてお客様に対しても丁寧な仕事ができ、それが荷主からの評価に繋がると考えるべきです。回り道のようでやっぱりまずは従業員の働き方や仕事の仕方をよく見て、従業員を大切にするということが必要だと思っています。

直接的に物流に関わっていない一般の国民の方への期待という意味で言うと、いま日本の高度な物流品質を当たり前だと思っている方も多いと思いますが、全然当たり前ではなくて、ギリギリの労力で限界の中でなんとか持ちこたえているサービスだということを理解してもらう必要があります。

例えば宅配が分かりやすいと思いますが、再配達を何度も頼む人がいるけど本当にそれでいいのか?その配達のためにどれだけのコストとエネルギーが使われているかということを立ち止まって考えてほしいです。

さらには物流サービスに対し正当な評価をしてほしい。物流は間違いなく人々の暮らし支えています。物流が滞れば日本経済も我々の暮らしも大混乱します。そういった意味においても、国民一般的な物流に対する社会的な評価の向上というのは、これからも我々として色々なところで発信していきたいです。

― 物流業界における働き方改革として、荷主や物流会社・運送会社が行うべきこと、準備すべきことや考え方を変えなくてはいけない部分はどのようなことがありますか。

その通りだと思います。荷主は「物流が大事なのは分かったけど、そこにコストを払ってもお客様から取れないよ」と言ってしまうと、それ以上話が進展しなくなってしまいます。しかし荷主のお客様となる一般国民である消費者の方が「物流に無理を生じさせているような事業者は許さない。評価しない」という姿勢が荷主を動かす一番の原動力になると思っていて、そこのサイクルをうまく回していければと思っています。

― 働き方改革が上手く進行している企業の中で、具体的にどんな取り組みをされていますか。

“見える化”を尽力している企業や、人を“育てる”ことにしっかり投資をしている企業はうまく進行していると思います。 “見える化”というのは働き方改革と直結する取り組みだと思うのですけれども、荷主ときちんと交渉をして適正な料金を収受して、それをドライバーや従業員に還元するというサイクルをうまく回せている企業をイメージしてもらえればと思います。そのための荷主との対等な関係構築して、そのための取引環境整備に取り組むことが重要だと思っています。

“育てる”という点については、多くのトラックドライバーの方と話をさせていただく中で結構転職を重ねる方が多いという実態を知りました。色々聞いてみると、いくつになってもその会社で留まってドライバー職でいる限りお給料も上がらないし待遇もほとんど変わらない、そうであるならば少しでも待遇の良いところに転職するという方が多いようです。

これを別の角度から見ると、その会社の中でドライバー業務をすることによって蓄積された能力を適切に評価されれば、その会社の中での定着率も高まると思います。能力を適切に評価するという点で、やっぱり従業員を育てることに高い意識を持ち、実行することが必要です。

例えば一つ星・二つ星と評価システムをきちんと作って、少しずつ能力アップが評価されるというような会社ですと、ドライバーの方の定着率が高いと聞きます。やはり、従業員を“使う”のではなく、大切に“育てる”ということを意識した企業運営が重要なのではないかと思います。

― そういった評価をするということで、若年層やシニアも働きやすくなっていきますよね。

そうだと思います。見える化による働き方改革も従業員を大事にしましょうという話も先ほどのESに繋がる話で、要は社員を大事にしましょうということ。それが全ての基本じゃないかなと思います。

― 国土交通省として考えられる、今後の展望についてお話いただけますか。

いかに事業者間の連携や協調を進めていくか。それが物流の継続的な安定性を保つための大きなポイントになると思っています。今まで通りに個社単位で物流の効率化を図ることももちろん大切ですが、どこかで限界が訪れると思います。その限界を超えた物流の効率化を進めるためには、共同化や連携が今後物流に求められる方向性だと思います。

国土交通省神澤さん

貨物の「貨」という字は「たから」と読む

― 最後に、物流業界に携わる読者の方にメッセージをお願いします。

ぜひ物流という業務に強い誇りを持っていただきたいと思います。私自身この仕事に携わらせていただくようになってから、物流に対する見方が物凄く変わりました。

例えば高速道路を走っているとトラックをいっぱい見かけますが、以前は「あー!前にトラックが来ちゃったよ!」くらいに思っていましたけど(笑)、今は「このドライバーさん今日も頑張っているんだ、お疲れ様です、ありがとうございます!」と見方が180度変わりました。

物流が経済・社会を支えているということも含めて、今後そういう考え方を一般国民の方にもどんどん広げて物流の社会的評価を上げていけるよう、微力ながら頑張りたいと思います。

貨物の「貨」という字を漢字辞典で調べると他に読み方がありまして、「たから」って読むんですね。それを見て凄く感動しました。お客様の宝物を運べるお仕事でお客様から信用をされていないとできないお仕事を物流事業者が担っていると思い、すごくうれしくなりました。こういったことも含めて、誇りを持って取り組んで頂ければ幸いです。

 

従業員を大切に育てることが働き方改善の第一歩だと再認識できました。神澤さんありがとうございました!

 

国土交通省
総合政策局 物流政策課 物流産業室
神澤 直子 氏プロフィール
大学卒業後、国土交通省に入省。国際航空分野で各国との航空交渉に携わった後、トラック業界をはじめとする自動車業界における女性の活躍促進等に取り組む。 その後、不動産に関わる税制担当として多種多様な業種の方と関わる機会を頂いた後、2017年より、現職にて倉庫業や貨物利用運送業等を担当。

インタビュー・構成:物流倉庫プランナーズスタッフ

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